2月末、春に移り変わろうとする季節に、
「旧博物館動物園駅」へ訪れた。
旧博物館動物園駅はかつて上野公園にあった
京成電鉄本線の駅である。
老朽化などの事情により、1994年に営業休止、
2004年でとうとう廃止になった。
いつか行ってみたいと思いながらも、先述の理由により
もう見ることは叶わなくなった駅。
しかし、幸運なことに去年の秋に期間限定で地下鉄の
一部が公開された。
次回もまた公開するかは現時点では分からない。
だからこそ、今回はまたとないチャンスである。
早朝、しかも寒い中にも関わらず、長い行列だったが、
朝の7時から並んだ甲斐があって、整理券を手に入れることが
できた。(それでも遅いのか、入場はお昼だった)
外観もそうだが、中も西洋様式のデザインが
高級感を漂わせていた。
同時にどことなく懐かしさをも感じた。
入り口には、巨大なアナウサギが
穴を掘っていた。
まるで私達をその穴へ誘うように黙々と。
前述にも話した通り、当駅は2004年に廃止された。
その時に訪れた人々達が駅の壁に別れを惜しむ言葉、
感謝の言葉がたくさん書き残してあった。
こんなにたくさんの人々に愛されている駅って、
これほど幸せなことはないのかもしれませんね。
しかし、残念なことに、今回は階段のホームまでの間、
踊り場までで、安全上から、そこからさらに下の階は
ガラスで遮っており、ホームまでは行くことは出来なかった。
しかし、このガラスにもここへ訪れた見学客が記念に
書き残した言葉がびっしり埋まっていた。
その言葉の隙間を覗いてみると、さらに下の階には
木製の改札口がうっすらと見えた。
踊り場にはアーティストが制作したアートやオブジェが
展示されていた。
ひと通り見学し終えて、階段を上る。
入口のドアから午後の日差しが差し込んでいた。
まるで夢から覚めたような錯覚だった。
「不思議の国」から戻ってきたアリスのように。