私の父にお願いをした。
「早朝の高速道路を撮影したいので、車の運転を
お願いできないかな?」
予想通り、嫌な顔をした。
「分かった、分かった」の顔をした。
OKということだ。
父が「どこまで行けばいいんだ?」と聞く。
「せっかくだから、東京ゲートウェイブリッジまで」
まだ夜といっても過言ではない真っ暗なうちに
車に乗って家を出た。
首都高速道路に入る頃には、夜が明け始めた。
夜の色と朝の色が混じり合ったグラテーションの
夜明けがとても綺麗だった。
撮影しているうちに、だんだん眠くなってきた。
父に無理に頼み込んで、こんな薄暗い時間の中で、
車の運転してくれているんだ。
父に頭を小突かれ、私は目を覚ました。
眉間にシワを寄せた父を見て、
「いい朝だね」
と言って爽やかに誤魔化した。
目の前に東京ゲートウェイがドンと
そびえ立っていた。
初めて見た私もそうだが、父が働いていた頃には、
まだ無かった東京ゲートブリッジを二人で驚嘆しながら
見上げた。
まるで恐竜が向かい合って威嚇し合っているようだ。
しばらく若洲海浜公園の中を他愛ないおしゃべりを
しながら歩き回った。
「今度、夜景を撮りにここへ来たらどうだ?」
「またコンテストに出すの?」
「写真教室はどうなんだ?」
「お前、全然モテねぇな?」
私の写真に関する活動について、色々と聞いてくる。
父なりの息子への気遣いなのかもしれない。
(最後の方は大きなお世話だ。)
こうしているうちに、低かったお日様もいつの間にか
高くなり、朝焼けのオレンジ色の空色も青くなった。
帰りは私が車を運転した。
助手席に、父は腕を組んでウトウトしていた。
2月の半ばだが、春の訪れを感じさせる陽射しが
とても暖かった。